岡山県津山市で2004年、小学3年の女児(当時9)が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた無職勝田州彦(くにひこ)被告(43)の裁判員裁判の判決が6日、岡山地裁であった。倉成章裁判長は、被告の自白は信用できると認め、求刑通り無期懲役を言い渡した。被告側は即日控訴した。
倉成裁判長は「極めて残酷な犯行だ。女児は突然見知らぬ男に襲われ、かけがえのない命を奪われた。将来を絶たれた無念は察するにあまりある」と述べた。
判決によると、被告は04年9月3日、津山市内で女児の後をつけていき、女児宅に侵入。わいせつな行為をしようと考え、両手で女児の首を絞め、抵抗されたため、刃物で腹や胸を複数回刺して殺害した。
被告は、事件から約14年後に逮捕された。逮捕直後の取り調べに殺害を自白したが、否認に転じた。弁護側は、自白した内容は、テレビ番組などで知った情報に過ぎず、信用できないとして無罪を訴えていた。
判決は、取り調べのやり取りなどを踏まえ、「被告は取調官の誘導なく供述した」と認定。自白内容は、傷の数や向きなど遺体の状況などと符合しており、犯人でなければ供述するのは難しいとし、信用できると結論づけた。(高橋孝二、米田優人)
取り調べ映像の「反訳書」朗読、裁判員への影響考慮か
今回の公判で、検察側は自白の信用性を立証するため、取り調べの録音・録画映像を法廷で流すよう求めたが、岡山地裁は認めなかった。映像が裁判員らに与える影響の大きさを考慮したとみられる。
代わりに地裁が採用したのが、映像のやり取りを文字に起こした「反訳書」。公判では、検察官が被告や警察官の役に分かれて朗読したり、映像の一部を44コマの静止画に分けて示したりした。「感情が入りすぎている」という弁護側の異議を受け、裁判長が検察官に淡々と朗読するよう求める一幕もあった。
判決後、裁判員を務めた3人が会見に応じた。30代の女性は「岡山弁独特の言葉があって、反訳書だとニュアンスが分かりにくかった」と話した。ほかの2人は「リアルに近い映像を見たかった」「読み返せる意味で反訳書は役に立った」と振り返った。
判決後、勝田被告の弁護人は「反訳書の証拠採用は違法だ」と批判し、控訴審で争う方針を示した。一方、岡山地検の野村安秀次席検事も会見を開き「(反訳書の証拠採用は)当然だ。異例という声もあるが、こうしたやり方があるというだけ」と述べた。
遺族「判決確定まで裁判見守る」
遺族はこれまでの公判で、事件が起きた日のことや、今の思いを語ってきた。判決後、「有罪判決が出てひとまずほっとしています。判決が確定するまで裁判を見守りたい」とのコメントを弁護士を通じて出した。
会見を開いた弁護士によると、遺族は法廷で、「無期懲役」と主文が読み上げられるのを涙を流しながらじっと聞いていたという。結審の際、遺族側は「死刑に処されるべきだ」との意見を主張していた。
被告側が即日控訴したことについて、弁護士は「予想していた。確定するまでじっと見守りたいとご遺族は考えており、我々も同じだ」と説明した。さらに弁護士個人の考えとしたうえで、被告の「自白」に対する審理が中途半端になっていると指摘。「少しは事実が分かったかもしれないが、本当の真実は分からないままだった」と語った。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル